「CEATEC 2019」にご来場いただきありがとうございました。

イノベーショントークステージ

<朴先生の講演要旨>

  • 東京大学ものづくり経営研究センターでものづくり戦略、技術経営戦略、IT戦略、SCM戦略を研究し、「統合型ものづくりITシステム」研究会をリードしている朴英元先生とスマートインサイト 町田潔が登壇してトークを行いました。
  • 最初に朴先生より日本のものづくりとそれを支えるITシステムを長年研究してきた経験よりお話をして頂きました。まずものづくりに影響を与えている大きな背景としてものづくりの対象となっている人工物(製造されるものは全て人工的につくられたものという意味です)が複雑化していることを指摘されました。特に自動車・デジタル機器・精密機械・産業設備など、人工物としての機械製品が複雑化していく中で対処していかなければならないという課題があるということです。この中に現れた新たなトレンドとしてデジタル化の大きな流れがあり「デジタルトランスフォメーション経営」を提唱されました。背景としては、デジタル化の第1フェーズがIT利用による業務プロセスの強化、第2フェーズはITによる業務の置き換え、そして第3フェーズは業務がICTへ、ICTが業務へとシームレスに変換される状態で、従来はサイエンス・フィクションの世界であった仕組みが人工知能(AI)やロボティクス等のICT技術の革新により部分的に実現されるようになってきているということです。
  • このトレンドをものづくりの中で考えるとき、先生はデジタルトランスフォメーションを積極的に取り込んだ「デジタルトランスフォメーション経営」として五つのポイントをあげています。
  • デジタルトランスフォメーション時代に求められる経営戦略
    1. 情報(information)のデジタル化:自社の情報・ナレッジ(設備情報とベテランなどの人間系情報)をデジタル化し、設備と業務プロセスを連結させる。→個人知から組織知へ(Knowledge DB構築:アーキテクチャ分析)
    2. オペレーション(operation)のデジタル化:顧客と自社のエコシステムに関わるすべてのシステム、すなわち開発(CAD, PLM), 財務, 会計, 人事管理(ERP), 顧客管理(CRM), サプライヤ・物流管理(SCM)などのすべての業務システムをデジタル化し、統合すべき(GIMIS)。
    3. 人材(workforce)のデジタル化:機械と人を教える(Teach Machine、Teach people)→企業が保有したデータを入力してマシンラーニングで人工知能のレベルを高めて、そして運用する人を教えるべき。(デジタル人材の育成)
    4. 最新デジタル技術導入のためのオープンイノベーション:GoogleのDeep Learningなどの外部のAI技術を素早く導入する仕組み(最新技術の探索・センシング能力と活用能力)→ Google/Facebookなどの最新AIアルゴリズム導入、あるいはAIベンチャーの活用
    5. 個人知を組織知にまとめる人材と組織(change agent/org)を新設。(システムアーキテクトと経営陣直属のアーキテクチャ室設置の提案)
  • ここでオープンイノベーションが重要だという指摘が多くある中で、日本企業のものづくりではこれが有効かどうかについてお話がありました。日本が強みとしてきたものづくりはアナログによる人と人のコミュニケーションから生み出される知恵(暗黙知・形式知)に支えられている部分が大きく、単純にオープンイノベーションを取り入れるだけでは非常に危険ではないかということです。クローズドイノベーションをもっと重視して、各々適切なところで共存させる戦略が重要ではないかということです。この共存させる戦略を作り上げる源は「アーキテクチャー分析」という考え方を東大ものづくり経営研究センターでは提唱されているところです。これは公開されているのでぜひ参照して研究してみてほしいということでした。
  • ただ一方で重要なポイントは、クローズドイノベーションを生み出してきた暗黙知・形式知はアナログ時代の「ワイガヤ」や「大部屋方式」によるところが大きく、これがそのまま今でも強みとなりものづくりを支えている企業があるならば、とても危険な状態にあるという指摘です。
  • アーキテクチャー分析などによって確認されたコアコンピータンスを確実に持った上でオープンイノベーションを取り込むのは重要な戦略ですが、そうでない場合にはオープンイノベーションの持つ危険な側面に注意が必要ですし、コアコンピータンスがアナログによる知恵をベースにしている場合にデジタル化の中では、これが新たなウイークポイントになるという指摘です。
  • デジタルトランスフォメーション経営を実現し、アナログの知恵をデジタルに置き換え、AIも利用してコアコンピータンスをデジタル化の中で確立してゆくことがこれからの日本のものづくり経営にとって非常に重要であるというお話でした。

<町田の講演要旨>

  • スマートインサイト 町田より、AI時代にノウハウを蓄積するためのデジタルエンジニアリングの必要性についてお話をさせて頂きました。朴先生の指摘するAIにノウハウを蓄積するには、データが非常に重要になります。一方で企業システムが散在して必要な情報が一元化できていないという状況を変革する必要があります。
  • デジタルトランスフォメーション経営戦略の中で朴先生が指摘する「情報のデジタル化」と「オペレーションのデジタル化」を進める中で、データエンジニアリング力をつけてAIと両輪としてフル回転させてゆくことが重要ということなどを事例含めてお話しさせて頂きました。

出展者セミナー

「データ統合からAI時代のデータエンジニアリングへ~ Mµgenによる実践とこれから~」と題してコンサルティンググループ よりMugen 2.3について開発の背景や事例と機能説明、デモを実演しました。 製造業ユーザー様が多いMugenですが、今回は多様な業種からのご参加がありました。